2017-04

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女声合唱のための「三つの抒情」(作曲/三善晃)

   I 或る風に寄せて(立原道造)

おまへのことでいつぱいだつた 西風よ
たるんだ唄のうたひやまない 雨の昼に
とざした窗(まど)のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら

おぼえてゐた おののきも 顫(ふる)へも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかつてゐる

おまへのうたつた とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだらう 誰が
それを忘れるのだらう……さうして

夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来るうすやみのなかに
おまへは 西風よ みんななくしてしまつた と



   II 北の海(中原中也)

海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。

曇つた北海の空の下、
浪はところどころ歯をむいて、
空を呪つてゐるのです。
いつはてるとも知れない呪。

海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。



   III ふるさとの夜に寄す(立原道造)

やさしいひとらよ たづねるな!
――なにをおまへはして来たかと 私に
やすみなく 忘れすてねばならない
そそぎこめ すべてを 夜に……

いまは 嘆きも 叫びも ささやきも
暗い碧(みどり)の闇のなかに
私のためには 花となれ!
咲くやうに にほふやうに

この世の花のあるやうに
手を濡らした真白い雫の散るやうに――
忘れよ ひとよ……ただ! しばし!

とほくあれ 限り知らない悲しみよ にくしみよ……
ああ帰つて来た 私の横たはるほとりには
花のみ 白く咲いてあれ! 幼かつた日のやうに

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テーマ: - ジャンル:小説・文学

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