2006-06

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三つの無伴奏混声合唱曲(作詩/北原白秋 作曲/柴田南雄)

   水上

水上(みなかみ)は思ふべきかな。
 苔清水湧きしたたり、
 日の光透きしたたり、
 橿(かし)、馬酔木(あしび)、枝さし蔽ひ、
 鏡葉(かがみは)の湯津(ゆづ)真椿(まつばき)の真洞(まほら)なす
水上(みなかみ)は思ふべきかな。

水上(みなかみ)は思ふべきかな。
 山の気の神処(こころど)の澄み、
 岩が根の言問(ことと)ひ止み、
 かいかがむ荒素膚(あらすはだ)の
 荒魂(あらみたま)の神魂(かみむす)び、神つどへる
水上(みなかみ)は思ふべきかな。

水上(みなかみ)は思ふべきかな。
 雲、狭霧、立ちはばかり、
 丹(に)の雉子(きぎし)立ちはばかり、
 白き猪(ゐ)の横伏し喘(あへ)ぎ、
 毛の荒物(あらもの)のことごとに道塞(ふた)ぎ寝(ぬ)る
水上(みなかみ)は思ふべきかな。

水上(みなかみ)は思ふべきかな。
 清清(さわさわ)に湧きしたたり、
 いやさやに透きしたたり、
 神ながら神寂(さ)び古る
 うづの、をを、うづの幣帛(みてぐら)の緒の鎮(しづ)もる
水上(みなかみ)は思ふべきかな。

水上(みなかみ)は思ふべきかな。
 青水泡(あをみなわ)とよみたぎち、
 うろくづの堰(せ)かれたぎち、
 たまきはる命の渦の
 渦巻の湯津(ゆづ)石村(いわむら)をとどろき揺る
水上(みなかみ)は思ふべきかな。


   早春

     香取神宮

槙(まき)のこずゑに、青鷺の
群れて巣をもつ幽(かそ)けさよ。
空のはるかを、日の暈(かさ)の
凝(こご)りかけつつ行き消えぬ。


   風

   一

遠きもの
まづ揺れて、
つぎつぎに、
目に揺れて、
揺れ来(きた)るもの、
風なりと思ふ間(ま)もなし、
我いよよ揺られはじめぬ。

   二

風吹けば風吹くがまま、
我はただ揺られ揺られつ。
揺られつつ、その風をまた、
わがうしろ遥かにおくる。

   三

吹く風に揺れそよぐもの、
目に満ちて、
翔(かけ)る鳥、
ただ一羽、
弧(こ)は描(か)けど、
揺れ揺れて、
まだ空の中(うち)。

   四

吹く風の道に、
驚きやまぬものあり、
光り、また、暗(くら)みて、
をりふし強く、急に強く、
光り、また、暗(くら)む、――
すべて秋、今は秋。

   五

輝けど、
そは遠し。
尾花吹く風。

CD
日本合唱曲全集「優しき歌・第二」柴田南雄作品集

楽譜
柴田南雄 混声合唱曲集
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テーマ:詩・唄・詞 - ジャンル:小説・文学

混声合唱曲「邪宗門秘曲」(作詩/北原白秋 作曲/木下牧子)

   邪宗門秘曲

われは思ふ、末世(まつせ)の邪宗(じやしゆう)、切支丹(きりしたん)でうすの魔法(まはふ)。
黒船(くろふね)の加比丹(かひたん)を、紅毛(こうまう)の不可思議国(ふかしぎこく)を、
色赤(いろあか)きびいどろを、匂(にほひ)鋭(と)きあんじやべいいる、
南蛮(なんばん)の桟留縞(さんとめじま)を、はた、阿剌吉(あらき)、珍酡(ちんた)の酒を。

目見(まみ)青きドミニカびとは陀羅尼(だらに)誦(ず)し夢にも語る、
禁制(きんせい)の宗門神(しゆうもんしん)を、あるはまた、血に染む聖磔(くるす)、
芥子粒(けしつぶ)を林檎のごとく見すといふ欺罔(けれん)の器(うつは)、
波羅葦僧(はらいそ)の空(そら)をも覗(のぞ)く伸(の)び縮(ちゞ)む奇(き)なる眼鏡(めがね)を。

屋(いへ)はまた石もて造り、大理石(なめいし)の白き血潮(ちしほ)は、
ぎやまんの壺(つぼ)に盛られて夜(よ)となれば火(ひ)点(とも)るといふ。
かの美(は)しき越歴機(えれき)の夢は天鵝絨(びろうど)の薫(くゆり)にまじり、
珍(めづ)らなる月の世界の鳥獣(とりけもの)映像(うつ)すと聞けり。

あるは聞く、化粧(けはひ)の料(しろ)は毒草(どくさう)の花よりしぼり、
腐(くさ)れたる石の油(あぶら)に画(ゑが)くてふ麻利耶(まりや)の像(ざう)よ、
はた羅甸(らてん)、波爾杜瓦爾(ほるとがる)らの横(よこ)つづり青なる仮名(かな)は
美(うつ)くしき、さいへ悲しき歓楽(くわんらく)の音(ね)にかも満つる。

いざさらばわれらに賜(たま)へ、幻惑(げんわく)の伴天連尊者(ばてれんそんじや)、
百年(もゝとせ)を刹那(せつな)に縮(ちゞ)め、血の磔(はりき)背(せ)にし死すとも
惜(を)しからじ、願ふは極秘(ごくひ)、かの奇(く)しき紅(くれなゐ)の夢、
善主麿(ぜんすまろ)、今日(けふ)を祈(いのり)に身(み)も霊(たま)も薫(くゆ)りこがるる。

CD


楽譜
邪宗門秘曲 改訂新版 〔カワイ出版社〕

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

男声(混声)合唱組曲「柳河風俗詩」(作詩/北原白秋 作曲/多田武彦)

   I 柳河

もうし、もうし、柳河(やながは)じや、
柳河じや。
銅(かね)の鳥居を見やしやんせ。
欄干橋(らんかんばし)を見やしやんせ。
(馭者は喇叭の音(ね)をやめて
 赤い夕日に手をかざす。)

薊(あざみ)の生えた
その家は、……
その家は、
旧(ふる)いむかしの遊女屋(ノスカイヤ)。
人も住はぬ遊女屋(ノスカイヤ)。

裏の BANKO* にゐる人は、……
あれは隣の継娘(ままむすめ)。
継娘(ままむすめ)。
水に映つたそのかげは、……
そのかげは
母の形見(かたみ)の小手鞠(こてまり)を、
小手鞠を、
赤い毛糸でくくるのじや、
涙片手にくくるのじや。

もうし、もうし、旅のひと、
旅のひと。
あれ、あの三味をきかしやんせ。
鳰(にほ)の浮くのを見やしやんせ。
(馭者は喇叭の音をたてて、
 あかい夕日の街(まち)に入る。)

夕焼(ゆふやけ)、小焼(こやけ)、
明日(あした)天気になあれ。

  * 緑台、葡萄牙(ポルトガル)の転化か。



   II 紺屋のおろく

にくいあん畜生は紺屋(かうや)のおろく、
猫を擁(かか)えて夕日の浜を
知らぬ顔して、しやなしやなと。

にくいあん畜生は筑前しぼり、
華奢(きやしや)な指さき濃青(こあを)に染(そ)めて、
金(きん)の指輪もちらちらと。

にくいあん畜生が薄情(はくじやう)な眼(め)つき。
黒の前掛(まへかけ)、毛繻子か、セルか、
博多帯しめ、からころと。

にくいあん畜生と、擁(かか)えた猫と、
赤い夕日にふとつまされて
潟(がた)に陥(はま)つて死ねばよい。ホンニ、ホンニ……



   III かきつばた

柳河の
古きながれのかきつばた、
昼は ONGO* の手にかをり、
夜は萎(しを)れて
三味線の
細い吐息(といき)に泣きあかす。
(鳰(ケエツグリ)のあたまに火が点(つ)いた、
 潜(す)んだと思ふたらちよいと消えた。)

  * 両家の娘、柳河語。



   IV 梅雨の晴れ間

廻(まは)せ、廻(まは)せ、水ぐるま、
けふの午(ひる)から忠信(ただのぶ)が隈(くま)どり紅(あか)いしやつ面(つら)に
足どりかろく、手もかろく
狐六法(きつねろつぱふ)踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
雨に濡れたる古むしろ、円天井のその屋根に、
青い空透き、日の光
七宝(しつぱふ)のごときらきらと、化粧部屋(けしやうべや)にも笑ふなり。

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
梅雨(つゆ)の晴れ間(ま)の一日(いちにち)を、せめて楽しく浮かれよと
廻り舞台も滑(すべ)るなり、
水を汲み出せ、そのしたの葱の畑(はたけ)のたまり水。

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
だんだら幕の黒と赤、すこしかかげてなつかしく
旅の女形(おやま)もさし覗く、
水を汲み出せ、平土間(ひらどま)の、田舎芝居の韮畑(にらばたけ)。

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
はやも午(ひる)から忠信(ただのぶ)が紅隈(べにくま)とつたしやつ面に
足どりかろく、手もかろく、
狐六法(きつねろつぱふ)踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……

CD




楽譜(男声版)


楽譜(混声版)

テーマ: - ジャンル:小説・文学

女声合唱のための「三つの抒情」(作曲/三善晃)

   I 或る風に寄せて(立原道造)

おまへのことでいつぱいだつた 西風よ
たるんだ唄のうたひやまない 雨の昼に
とざした窗(まど)のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら

おぼえてゐた おののきも 顫(ふる)へも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかつてゐる

おまへのうたつた とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだらう 誰が
それを忘れるのだらう……さうして

夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来るうすやみのなかに
おまへは 西風よ みんななくしてしまつた と



   II 北の海(中原中也)

海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。

曇つた北海の空の下、
浪はところどころ歯をむいて、
空を呪つてゐるのです。
いつはてるとも知れない呪。

海にゐるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にゐるのは、
あれは、浪ばかり。



   III ふるさとの夜に寄す(立原道造)

やさしいひとらよ たづねるな!
――なにをおまへはして来たかと 私に
やすみなく 忘れすてねばならない
そそぎこめ すべてを 夜に……

いまは 嘆きも 叫びも ささやきも
暗い碧(みどり)の闇のなかに
私のためには 花となれ!
咲くやうに にほふやうに

この世の花のあるやうに
手を濡らした真白い雫の散るやうに――
忘れよ ひとよ……ただ! しばし!

とほくあれ 限り知らない悲しみよ にくしみよ……
ああ帰つて来た 私の横たはるほとりには
花のみ 白く咲いてあれ! 幼かつた日のやうに

CD


楽譜

テーマ: - ジャンル:小説・文学

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