2017-09

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男声(混声)合唱組曲「柳河風俗詩」(作詩/北原白秋 作曲/多田武彦)

   I 柳河

もうし、もうし、柳河(やながは)じや、
柳河じや。
銅(かね)の鳥居を見やしやんせ。
欄干橋(らんかんばし)を見やしやんせ。
(馭者は喇叭の音(ね)をやめて
 赤い夕日に手をかざす。)

薊(あざみ)の生えた
その家は、……
その家は、
旧(ふる)いむかしの遊女屋(ノスカイヤ)。
人も住はぬ遊女屋(ノスカイヤ)。

裏の BANKO* にゐる人は、……
あれは隣の継娘(ままむすめ)。
継娘(ままむすめ)。
水に映つたそのかげは、……
そのかげは
母の形見(かたみ)の小手鞠(こてまり)を、
小手鞠を、
赤い毛糸でくくるのじや、
涙片手にくくるのじや。

もうし、もうし、旅のひと、
旅のひと。
あれ、あの三味をきかしやんせ。
鳰(にほ)の浮くのを見やしやんせ。
(馭者は喇叭の音をたてて、
 あかい夕日の街(まち)に入る。)

夕焼(ゆふやけ)、小焼(こやけ)、
明日(あした)天気になあれ。

  * 緑台、葡萄牙(ポルトガル)の転化か。



   II 紺屋のおろく

にくいあん畜生は紺屋(かうや)のおろく、
猫を擁(かか)えて夕日の浜を
知らぬ顔して、しやなしやなと。

にくいあん畜生は筑前しぼり、
華奢(きやしや)な指さき濃青(こあを)に染(そ)めて、
金(きん)の指輪もちらちらと。

にくいあん畜生が薄情(はくじやう)な眼(め)つき。
黒の前掛(まへかけ)、毛繻子か、セルか、
博多帯しめ、からころと。

にくいあん畜生と、擁(かか)えた猫と、
赤い夕日にふとつまされて
潟(がた)に陥(はま)つて死ねばよい。ホンニ、ホンニ……



   III かきつばた

柳河の
古きながれのかきつばた、
昼は ONGO* の手にかをり、
夜は萎(しを)れて
三味線の
細い吐息(といき)に泣きあかす。
(鳰(ケエツグリ)のあたまに火が点(つ)いた、
 潜(す)んだと思ふたらちよいと消えた。)

  * 両家の娘、柳河語。



   IV 梅雨の晴れ間

廻(まは)せ、廻(まは)せ、水ぐるま、
けふの午(ひる)から忠信(ただのぶ)が隈(くま)どり紅(あか)いしやつ面(つら)に
足どりかろく、手もかろく
狐六法(きつねろつぱふ)踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
雨に濡れたる古むしろ、円天井のその屋根に、
青い空透き、日の光
七宝(しつぱふ)のごときらきらと、化粧部屋(けしやうべや)にも笑ふなり。

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
梅雨(つゆ)の晴れ間(ま)の一日(いちにち)を、せめて楽しく浮かれよと
廻り舞台も滑(すべ)るなり、
水を汲み出せ、そのしたの葱の畑(はたけ)のたまり水。

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
だんだら幕の黒と赤、すこしかかげてなつかしく
旅の女形(おやま)もさし覗く、
水を汲み出せ、平土間(ひらどま)の、田舎芝居の韮畑(にらばたけ)。

廻(まは)せ、廻せ、水ぐるま、
はやも午(ひる)から忠信(ただのぶ)が紅隈(べにくま)とつたしやつ面に
足どりかろく、手もかろく、
狐六法(きつねろつぱふ)踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……

CD




楽譜(男声版)


楽譜(混声版)
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